もし貴女が歴女であればフランス菓子を違った視点から一層美味しく味わうことが出来るでしょう。

昔からあるお菓子は材料がとても素朴。粉と卵と砂糖、そこに何かしらの油脂分が加わって酪農地帯ならバター、地中海沿岸方面ならオイルとなる。
と、教わりました。

土地の名物が加わって完成となる。

「パン・ド・ジェンヌ」はジェノバ地方のお菓子という意味なのですが私はてっきりアーモンドの産地ということからその由来が来ているのかと思っていました。
詳しくは以下のサイトで記されてあります。

●パン・ド・ジェーヌ

パン・ド・ジェンヌは全卵を泡立てる共立て法で作るお菓子と決まっているのかどうか知りませんが私がイルプルで習ったそれは木べらで十分に混ぜることで軽すぎず重すぎずシットリした生地に焼き上がるというものでした。忘れもしない自宅一回目の試作は目が詰まってズッシリと重たく焼きあがりました。ホイッパーだと空気が入り込み過ぎて軽い間の抜けた味になってしまうからここでは絶対に木べらで混ぜるんだそうです。当然、覚悟あっての作業となりました。二回目は腕がどこかに行ってしまったほどの錯覚を感じながら混ぜ続けて成功した記憶があります。

混ぜ以外で大事なことは材料の大半を占めるはアーモンドパウダーなので良質の風味豊かなマルコナ種のものを使います。

2017年、パリのリッツ・エスコフィエでもこのお菓子を作りました。リッツの場合、共立ての後にメレンゲを立てて合わせます。しっとりしていて甘みは柔らかい食感に中和された優しいものに感じました。簡単といえば簡単ですがキッチンエイドなど卓上泡だて器を使わずハンドミキサーで作るとひとつひとつの作業が終わってから次の工程に行きます。フレンチメレンゲを立ててから別の作業をしている間にフレンチメレンゲはぼそぼそと固くなり混ぜにくくなります。そうなると最終的には余計に混ぜることになるので生地は傷みます。(リッツでは卓上泡だて器を使って複数の工程を同時進行で作りました。)

先日、生地の固さに注意して作ったパン・ド・ジェンヌはハンドミキサーによるものでしたが美味しく焼きあがりました。
素朴なお菓子をきちんと作ることは実はそう簡単ではないということですね。理解した上で作ると完成度の高いものになりますよ。

紅茶によく合います。